
寝る前のスマートフォンが睡眠に悪いということはよく知られていますが、では何をすれば眠りの質が上がるのでしょうか。三菱鉛筆株式会社が2024年に行った研究で、意外なほどシンプルな答えが示されました。それが「手書きで日記をつけること」です。
この研究では、就寝前に手書きで日記をつけた日、スマートフォンのアプリで日記をつけた日、何もしない日の3つの条件を比較し、心拍データをもとに睡眠の深さを計測しました。その結果、深い睡眠の割合は何もしない日が12%、アプリで日記をつけた日が20%、そして手書きで日記をつけた日が29%という結果になりました。手書き日記の夜は何もしない夜と比べて深い睡眠がおよそ2.4倍になったという、非常に印象的な差が生まれたのです。
なぜ手書きがここまで効果を発揮するのでしょうか。手書きという行為はスマートフォンの操作と異なり、ブルーライトを浴びることなく、ゆっくりとしたペースで自分の思考を整理することができます。文字を書くという身体的な動作が脳を穏やかに落ち着かせ、就寝前にリラックスした状態を作り出すのに適しているのだと考えられます。スマートフォンでの日記も何もしない日より効果が高かった点は興味深く、日記をつけるという行為そのものにも一定の効果があることがわかります。
日記の内容についても、書き方のコツがあります。2009年のウッドらの研究では、「その日の良かったこと」を書くことで主観的な睡眠の質が向上したことが報告されています。ポジティブな出来事を振り返り言葉にすることで、気持ちが穏やかになり眠りに入りやすい状態が整うのだと考えられます。ただし注意が必要なのは、深く考え込むような内容を書くことです。悩み事や心配事を延々と書き連ねると、かえって頭が冴えてしまい寝つきが悪くなることがあります。あくまでも「今日の良かったこと」「感謝できること」といった前向きな内容を、深く考えすぎずにさらりと書き留める程度にとどめることがポイントです。
手書き日記を始めるにあたって、特別な道具は必要ありません。手近なノートと好みのペンがあれば十分です。毎日続けることにプレッシャーを感じる必要もなく、眠れない夜や気分を落ち着かせたいときに試してみるところから始めても構いません。3行程度の短い文章でも十分な効果が期待できます。
就寝前のスマートフォンをやめたいけれど、何をすればいいかわからないという方にも、手書き日記は最適な代替習慣といえます。ペンを走らせるゆったりとした時間が、その日の出来事を穏やかに締めくくり、深い眠りへの入口を開いてくれるかもしれません。今夜から枕元にノートとペンを置いてみてはいかがでしょうか。