
昨夜、夢を見ましたか?朝目が覚めたときに夢の内容をはっきりと思い出せる人もいれば、夢など見ていないという人もいるかもしれません。しかし実は、夢はほぼすべての人が見ています。夢を見ていないと感じている人は、見ていないのではなく「覚えていない」だけなのです。眠りの中でレム睡眠という段階に入ると、脳は起きているときと同じように活発に活動しており、その間に夢を見ています。目が覚めたタイミングやその後の行動によって記憶に残るかどうかが変わるため、覚えている人と覚えていない人の差が生まれるのです。
では、夢をよく覚えている人と覚えていない人の間には、どのような違いがあるのでしょうか。2022年にヴァラーらが行った研究では、夢を思い出す頻度と創造性の関係を調べたところ、夢をよく覚えている人はクリエイティビティが高い傾向にあることがわかりました。興味深いのは、夢をよく覚えていることと記憶力の高さには関連が見られなかったという点です。単純に記憶力が優れているから夢を覚えているわけではなく、創造的な思考力と夢の記憶の間に特別なつながりがあるようなのです。
ではどのような人が夢をよく覚えているのでしょうか。シュレドルらの研究によると、共感性や感受性が高い人、また神経質な傾向や内向的な性格を持つ人が夢を覚えやすい傾向にあることがわかっています。他者の気持ちに敏感で、自分の内面と向き合う時間が多い人ほど、夢の記憶が残りやすいというのです。夢をよく覚えているという特徴は、その人の感受性や内省的な気質と深く結びついているのかもしれません。
こうした夢とクリエイティビティの関係は、偉大なアーティストたちの逸話にも色濃く反映されています。ポール・マッカートニーは、夢の中で誰かが演奏しているメロディーを聴き、目が覚めた後にその曲を書き留めたことが、後の名曲「Yesterday」の誕生につながったと語っています。また、シュールレアリスムの巨匠サルバドール・ダリは、夢の断片を作品に取り込むために意図的に短時間の睡眠を繰り返す手法を実践していたといいます。眠りと覚醒の境界線上に漂う夢うつつの状態から、現実では生まれ得ないような発想を引き出していたのです。こうした偉人たちにとって、夢は単なる睡眠中の現象ではなく、創造の源泉そのものでした。
夢をよく覚えているという人は、自分の感受性や想像力の豊かさのあらわれとして、少し誇らしく思っていいかもしれません。一方、夢をほとんど覚えていないという人も、夢は確かに見ているはずです。朝目が覚めた瞬間にすぐスマートフォンを見たり、起き上がって動き始めたりすると、夢の記憶はあっという間に消えてしまいます。目が覚めてすぐ、数秒間だけ夢の内容を思い返してみる習慣をつけることで、夢を覚えていられる機会が増えるかもしれません。枕元にメモ帳を置いて夢の内容を書き留める「夢日記」を試してみるのもひとつの方法です。
眠っている間も、脳は休まず物語を紡いでいます。毎朝の目覚めを、自分の内側から生まれたクリエイティブなメッセージを受け取る時間として意識してみると、睡眠がこれまでとは少し違って見えてくるかもしれません。