
電車や飛行機の中、あるいはソファでうとうとしながら気づいたら眠っていた、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。座ったまま眠れた気がしても、なぜかすっきりしない、横になって眠ったときとは明らかに違うと感じる方も多いと思います。その感覚は正しく、座った姿勢での睡眠は横になった状態と比べて大きく質が劣ることが研究から明らかになっています。
2022年にオガタらが行った研究では、座った状態で眠ると深い睡眠の割合が一晩でも12.9%にとどまり、横になった状態と比べて34%も少ないことがわかりました。さらに中途覚醒の回数は横になった状態の6倍にも上るという結果も報告されています。座ったまま眠っても、体が必要としている深い睡眠をほとんど得られていないのです。移動中の仮眠で疲れが取れないのは、気のせいではなくデータが裏付ける事実だったということです。
ただし座った姿勢でも、背もたれの角度によって睡眠の質が変わることがわかっています。2022年のカバレロ・ブルーノらの研究では、背もたれを倒さない状態よりもリクライニングを倒した状態の方が効率よく眠れることが示されています。90分間の睡眠研究では、リクライニングを倒した方が中途覚醒の時間が46%少なかったという結果が出ました。新幹線や飛行機での移動中に少しでも良い睡眠を取りたい場合は、できる限り背もたれを倒すことが有効です。
なぜ座った状態だと眠りにくいのでしょうか。主な理由のひとつは、姿勢を保つための筋肉への負担です。横になった状態では重力に逆らう必要がなく、筋肉が完全に脱力できますが、座った状態では体を支えるために筋肉が常に働き続けなければなりません。筋肉が休めないため、体が完全なリラックス状態に入りにくく、深い睡眠へと移行しにくくなるのです。
もうひとつの理由が呼吸への影響です。座った姿勢では首が前に倒れやすく、気道が狭くなることで呼吸が乱れやすくなります。呼吸が安定しないと睡眠が浅くなり、中途覚醒も増えてしまいます。特に首が大きく前に垂れた状態で眠ると、いびきや無呼吸が起きやすくなるため注意が必要です。
移動中の睡眠はどうしても座った姿勢になりがちですが、ネックピローなどを活用して首をしっかり支え、気道の狭まりを防ぐことで睡眠の質をある程度改善することができます。また可能であれば背もたれをできる限り倒し、体への負担を減らすことが大切です。座っての睡眠はあくまでも応急処置と考え、帰宅後はしっかりと横になって眠ることで体の回復を補うようにしましょう。