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2025.03.09
コラム

睡眠コラム|「別れ」は心だけでなく、睡眠まで奪っていた

卒業ソングがラジオから流れてくる季節になりました。長年共に過ごした友人との別れ、慣れ親しんだ環境を離れる寂しさ、大切な人とのお別れ。この時期は、さまざまな「別れ」が重なり、心がざわざわと落ち着かないという方も多いのではないでしょうか。そしてそんな時期に限って、夜なかなか寝つけなかったり、眠れても途中で目が覚めてしまったりすることはありませんか。実はそれ、気の持ちようでも、単なる疲れのせいでもないかもしれません。

人との別れは、体の中でも確かな変化を引き起こしています。2008年にスバーラらが行った研究では、別れを経験することでストレスホルモンであるコルチゾールが増加することが報告されています。コルチゾールは本来、外部からのストレスに対処するために分泌される物質で、体を緊張状態に保つ働きを持っています。このホルモンが増えると、自律神経のうち活動や興奮を司る交感神経が過敏に働くようになります。つまり、心が「別れ」を悲しんでいる一方で、体は知らず知らずのうちに警戒モードに入ってしまっているのです。

この状態が睡眠に影響しないはずがありません。2005年のバックリーらの研究では、交感神経が優位なままの状態では寝つきが悪くなり、眠りの途中で目が覚めやすくなることが明らかにされています。ベッドに入っても頭が冴えて眠れない、うとうとしてもすぐに目が覚めてしまう、朝起きても疲れが取れていない……。そうした経験の背景には、コルチゾールと交感神経の過活動という、体レベルのメカニズムが働いていることがあるのです。「眠れないのは自分が弱いから」「気合いが足りないから」と自分を責めてしまいがちですが、それは体が正直にストレスに反応しているサインでもあります。

では、こうした別れによるストレスと上手に向き合い、眠りを取り戻すためにはどうすればよいのでしょうか。まず取り入れてほしいのが、自分なりのリラクゼーション法を持つことです。深呼吸や瞑想は、興奮した交感神経を落ち着かせ、リラックスを促す副交感神経へとスムーズに切り替える効果があります。就寝前の数分間、ゆっくりと深い呼吸を繰り返すだけでも、体の緊張がほぐれていくのを感じられるはずです。難しく考えず、自分が心地よいと感じる方法を見つけることが大切です。

また、感情を内にため込まないことも重要です。別れの悲しさや寂しさを無理に抑えようとすると、ストレスはかえって蓄積されてしまいます。日記に気持ちをそのまま書き出してみたり、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらったりすることで、感情を外に吐き出す機会を意識的につくってみてください。頭の中でぐるぐると考え続けるよりも、言葉にして表現することで、心が少し軽くなることがあります。

それでも眠れない日が長く続くようであれば、一人で抱え込まずに専門家に相談することも選択肢のひとつです。不眠が慢性化すると、心身への影響はより広範囲に及びます。カウンセリングや医療機関への相談は、決して大げさなことではありません。自分の体と心を守るための、賢明な判断です。

別れはつらいものです。しかし、眠れない夜が続いていても、それはあなたの心が弱いからではありません。体が誠実にストレスに反応しているからこそ起きていることです。そのメカニズムを知るだけでも、夜の不安が少し和らぐかもしれません。この季節を乗り越えた先に、また新しい出会いと日々が待っています。どうか焦らず、自分のペースで、眠れる夜を取り戻してください。

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