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2026.07.05
コラム

止まると消え、飛ぶとまた鳴る-蚊の断続音が深い睡眠を減らしていた

夏の夜、ようやく眠れそうになったその瞬間に耳元で聞こえる「ぷーん」という音。あの一瞬で完全に目が覚めてしまった、という経験がある方は多いのではないでしょうか。たった一匹の蚊に夜の睡眠を台無しにされるあの感覚、実は科学的にも説明できる現象なのです。

夏の室内で飛び回る蚊の代表は「アカイエカ」です。人が寝静まった夜に活動的になり、エアコンで涼しくなった部屋でも平気で飛び回ります。この蚊の羽音は数百ヘルツ程度とされており、人間が特に敏感とされる数千ヘルツの音域よりも低い音です。本来であれば特別気になるような音ではないはずなのに、夜の静かな寝室では妙に際立って聞こえてしまいます。日中は周囲の様々な音が背景にあるため蚊の羽音は埋もれてしまいますが、夜の静寂の中ではその音だけが浮かび上がってくるのです。

さらに厄介なのは、眠っている間も脳が外の音を監視し続けているという点です。2025年のルジャンドルらの研究によると、睡眠中も脳は危険を知らせる音に反応しやすいことが報告されています。「刺されるかもしれない」という認識が蚊の羽音を危険信号として脳に登録し、たとえ浅い眠りの中であっても反応してしまうのです。音の大きさの問題ではなく、脳が「無視してはいけない音」として処理しているため、意識して気にしないようにしようとしても難しいのです。

さらに蚊の行動パターン自体も睡眠の敵です。蚊は飛んでいるときは羽音がしますが、どこかに止まると音が消えます。そしてまた飛び始めると音が戻ってくる。この止まると鳴るの繰り返しが断続的な音として脳への刺激を与え続けます。バスナーらの2026年の環境音研究では、断続的な音は深い睡眠を減らすことが報告されています。一定の音よりも、消えては現れるという不規則な音の方が睡眠への悪影響が大きいのです。

蚊一匹が睡眠を妨げるのは意志が弱いからではなく、脳の仕組みと蚊の行動パターンが組み合わさった結果です。夏の夜は蚊取り線香や電気蚊取り器など、寝室に蚊を侵入させない対策を事前に講じておくことが、睡眠を守るための最も確実な方法といえます。

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