
朝起きても体がだるい、食欲がない、なんとなく疲れが取れない。夏バテの症状に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。夏バテの原因として暑さや食欲不振がよく挙げられますが、実は「睡眠の悪化」も大きな要因のひとつであることが研究から明らかになっています。
マイナーらの2022年の研究によると、夜間の気温が30℃を超えると睡眠時間が平均14分短くなることが示されています。その主な要因は寝つきの遅れでした。14分という差は一見小さく感じるかもしれませんが、毎晩積み重なれば慢性的な睡眠不足につながります。
なぜ暑いと寝つきが悪くなるのでしょうか。眠りに入るためには深部体温を下げることが必要です。私たちが眠りにつくとき、手足の血管が広がって体の中心部の熱を外に逃がし、深部体温を低下させることでスムーズに眠りに入れます。しかし夏の蒸し暑い夜は外気温が高く湿度も高いため、体から熱が逃げにくくなります。熱の逃げ場がなくなることで深部体温がなかなか下がらず、寝つきが悪くなってしまうのです。
この睡眠の悪化が夏バテに直結することも研究から示されています。フジイらの2015年の研究では、気温が高い時期に睡眠の質が悪い人は疲労が増加する一方、睡眠の質が良い人は疲労に変化がなかったという結果が報告されています。同じ暑さの中でも、眠れているかどうかで疲労の蓄積に大きな差が生まれるのです。夏バテを感じている方は、暑さそのものだけでなく、睡眠の質が落ちていることが疲労の原因になっている可能性があります。
さらに睡眠不足は体の放熱能力にまで影響することがわかっています。コエッジェらの2025年の研究では、睡眠不足の状態で40℃の暑い環境下で運動すると、体の放熱が減少して熱が溜まりやすくなることが示されています。暑さが睡眠を悪化させ、睡眠不足が体の熱を逃がす力を低下させるという悪循環が生まれてしまうのです。夏バテが一度始まるとなかなか回復しにくいと感じるのは、こうした悪循環が影響しているのかもしれません。
夏バテ対策として食事や水分補給に気をつけている方は多いと思いますが、睡眠環境を整えることも同様に重要です。エアコンで寝室の温度と湿度を適切に保ち、体が熱を逃がしやすい環境をつくることが、夏バテを防ぐための根本的な対策になります。今夜の睡眠環境を見直すことが、明日の疲れを残さないための第一歩です。