
卓球は「速い競技」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし卓球に求められるのは単なる反射速度だけではありません。相手の動き、ボールの回転、次のコースを一瞬で読み取り、判断して動く「読む力」こそが勝負を分ける重要な能力です。そしてその力を支えているのが、睡眠です。
アスリートは激しいトレーニングをしているためよく眠れているイメージがあるかもしれませんが、実際にはリーダーらの研究によるとアスリートの睡眠効率は平均80.6%と、一般人の88.7%より低い傾向があることが報告されています。試合へのプレッシャーや遠征による環境の変化、トレーニングによる体の興奮状態など、アスリートならではの睡眠を妨げる要因が重なっているためです。
睡眠不足が卓球のパフォーマンスに与える影響を調べた研究があります。シューらの研究では、卓球選手が36時間の徹夜をすると「反応を止める力」、つまり不要な反応を抑制する能力にかかる時間が遅れてしまうことが明らかになりました。卓球では相手のフェイントに惑わされず正確に判断する力が求められますが、睡眠不足によってその能力が低下してしまうのです。
さらに「空間を読む力」にも睡眠不足は影響します。ペンらやダイらの研究では、36時間の睡眠不足後に空間認知の反応が遅れ、打球コースの予測精度も低下したことが報告されています。相手の動きを先読みして体を動かすという卓球の本質的な能力が、睡眠不足によって損なわれてしまうのです。
こうした研究結果は、トップ選手の実感とも一致しています。卓球日本代表の宇田選手はNTT東日本協賛の睡眠相談の中で「睡眠が乱れると、パフォーマンスは下がり、さらにプレッシャーがかかると眠りにくい感じがする」と語っています。睡眠の乱れがパフォーマンスを下げ、そのプレッシャーがさらに眠りを妨げるという悪循環は、トップアスリートにとっても切実な問題なのです。
卓球に限らず、判断力や予測力、集中力を必要とするあらゆる場面において、睡眠は欠かせない土台です。速く動く体を作るだけでなく、正確に読んで判断する脳を整えるためにも、毎晩の睡眠を大切にすることが競技力向上への確実な一歩になります。