
「自分は夜型だから朝が苦手」「どれだけ寝ても眠い気がする」そんなふうに感じたことはありませんか。努力や習慣の問題だと思いがちですが、実は睡眠の個人差には遺伝的な要因が深く関わっていることが、睡眠研究から明らかになってきました。身長のばらつきの約80%が遺伝的要因によるものだといわれていますが、睡眠もそれと同様に、生まれ持った特性が大きく影響しているのです。今回は遺伝的な影響が確認されている代表的な4つの睡眠特性をご紹介します。
まず睡眠時間についてです。バークレーらの研究によると、必要な睡眠時間の個人差における遺伝的影響は30〜55%とされています。「自分は8時間眠らないとだめだ」「6時間で十分に動ける」といった違いは、単なる習慣の差ではなく、ある程度は生まれつき決まっているのです。特に注目されているのがショートスリーパーと呼ばれる、短時間睡眠で十分に機能できる人たちです。ペレグリーノらの研究では、このショートスリーパー関連遺伝子を持つ人は全人口の約1%以下という報告もあり、ごく少数の人だけが持つ特別な遺伝的特性であることがわかります。
次に朝型・夜型の違いです。ジョーンズらの研究によると、この特性への遺伝的影響は約50%とされています。つまり、朝が得意かどうか、夜に活動的になりやすいかどうかの約半分は、生まれながらに決まっているということです。「早起きが苦手なのは意志が弱いから」と自分を責めている方も多いかもしれませんが、夜型の傾向が強い方はある程度それが遺伝的な特性である可能性があります。
三つ目は睡眠の質、つまり眠りの深さです。デ・ジェンナーロらの研究では、遺伝的影響は30〜40%と報告されています。睡眠中の脳波パターンにも生まれつき決まっている部分があるとされており、深く眠れるかどうかにも個人差があることがわかっています。「どうしても眠りが浅い」と感じている方は、体質的な要因が関係している可能性があります。
四つ目は睡眠障害との関連です。ワトソンらやウィンケルマンらの研究によると、不眠症やナルコレプシー、むずむず脚症候群といった睡眠障害への遺伝的影響は30〜60%とされています。睡眠障害は生活習慣だけでなく、遺伝的な傾向も確認されており、家族に同様の症状を持つ人がいる場合は特に注意が必要です。
これらの研究結果は、決して「遺伝だから何もできない」というメッセージではありません。遺伝的な影響があるとはいえ、残りの部分は環境や生活習慣によって変えられる余地があります。しかし自分の睡眠の特性を遺伝的な傾向として受け入れることで、無理に他人と同じ睡眠パターンを目指すのではなく、自分に合った眠り方を探すことが大切だとわかります。朝型・夜型の違いも、睡眠時間の長短も、その人固有の特性として尊重することが、より良い睡眠への第一歩になるのです。